先日、2014年の平均寿命が発表になりました。
男女ともに最高記録を更新し、男性は80歳を超えました。

厚生労働省によると、去年の日本人の平均寿命は、男性が80.21歳、女性が86.61歳で、おととしと比べて男性は0.27歳、女性は0.20歳上回り、いずれも過去最高を更新。

男性の平均寿命は初めて80歳を超え、香港、アイスランド、スイスに次いで世界4位。
女性は2年連続で世界1位。

平均寿命が女性だけでなく男性も80歳を超えたのは、世界でも香港やスイスなど一部の国や地域に限られていて、日本人の長寿は世界のトップレベルとなっています。

まずこれは、手放しで喜ぶべき明るいニュースだと思います。

このところ超高齢社会という言葉が一般化し、高齢者が増えることが悪いことのように言われる風潮を感じます。
実際に年金問題、医療費高騰、世代間格差の問題は深刻で、危機的状況にあると考えなければなりません。

しかしながら「長く生きたい」というのは人類の普遍的な願いであり、その歴史上最高ともいえる記録を、男女で、1億人以上いる国で達成しているのですから、これを快挙と言わずして何を言うべきか。

もっともっと喜んでいいのではないでしょうか。

長寿の結果、社会保障の問題が生じるのであれば、それは次の段階の問題として、解決を目指せばいいのです。

さて、そんなわけで平均寿命が伸び続けているのですが、
実は厚生労働省は、その平均寿命についての関心をうしないつつあります。

正確には、ほかの指標をより重視しようとしています。

それが「健康寿命」です。

を見てみます。
「はじめに」で以下のように謳っており、健康寿命を延ばすことにシフトしようとしている様子が伺えます。

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これまで、厚生労働省(旧厚生省、労働省)は、国民の健康のため様々な取組みを進めてきた。我が国は現在、男女とも平均寿命で世界最高水準を達成するまでになっているが、今後、これまでにどの国も経験したことのない超高齢社会を迎えることになる。そして今やQOL(Quality of Life)、すなわち生活の質、中身に、より多くの関心が寄せられるようになってきた。
 
こうした中、一人一人が心豊かに生き生きと過ごせるようにしていくためには、単に長寿であるだけでなく、「いかに健康で過ごすことのできる期間を長く保つか」、すなわち健康寿命の延伸と、それによる健康長寿社会の実現が、今を生きる私たちにとって最重要課題の1つと言えよう。また、できるだけ健康な状態で過ごすことによって、結果的に医療・介護費用の増加を少しでも減らすことができれば、国民負担の軽減につながるとともに社会保障の持続可能性も高まることとなり、これは個人にとっても国家にとっても望ましいことと考えられる。

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そして、健康寿命は今国際的に見てどうか。

健康寿命ランキング

なんと、男女ともに世界一!

ということで、実は日本は長生きできる国なだけでなく、「健康に」長生きできる国でもあるのです。
ちょっと意外でした。日本は寝たきりが多く不健康な時間を長く過ごしているような印象を持っていましたが、
必ずしもそういうわけではないようです。
(ただ、この健康寿命の定義は各国であいまいなようです。この点は機会を見つけて詳しく見てみたいと思います)

さてさて、とはいいながら、
2010年時点で、平均寿命と健康寿命の差は、男性9.13年、女性12.68年となっており、この差が大きいほど、日常生活に制限のある「不健康な期間」が長いこと
になる。多くの人は「健康」が幸福感を判断するために重要であると考えていることからすると、「健康」を害した状態で生活することは、本人の幸福感に大きな影響を与えることになる。

です。10年、結構長い時間だと思います。

そしてこの差は、少しずつではありますが広がっています。
平均寿命と健康寿命の差
日常生活に制限のない期間(健康寿命)について、平成 13 年と平成 22 年を比べると、男性は 69.40 年から 70.42 年へと 1.02 年、女性は 72.65 年から 73.62 年と 0.97年延びている。一方、平均寿命をみると、同期間で、男性は 78.07 年から 79.55 年へと 1.48 年、女性は 84.93 年から 86.30 年へと 1.37 年延びている。
(厚生労働省 「健康日本21」より)

つまり、健康でない期間も伸びることで、平均寿命が延びている部分がここ10年で0.5年分くらいあるということです。
これは、長生きする本人の幸福度、そして社会保障費の観点からも、手放しでいい問題ではありません。

日本という国の方向性として、健康寿命を延ばすことを優先し、結果として平均寿命が短くなることもやむなし、という態度が求められているのではないか、と私は考えます。

例えば、本人が希望しない胃ろうや延命措置。こうしたことは財政上も、個人の幸福の観点からも削減のインセンティブが働くような仕組みに変える(ただし、生きたい方の意思を尊重すべき、と私は考えています)。

また、予防医療や健康増進の施策については、逆に今まで以上に手当てがなされたり、保険から費用が出るような仕組みにする。
現状では、例えばお医者さんは風邪をひく前に予防してしまうと、報酬が1円も入ってこない仕組みになっています。

この発想の転換は、当然のことながら大きな苦痛を伴います。

日本人の死生観も変えなければなりません。必ずしも長く生きることを求めるのではなく、どこかで運命を天に任せる。
安楽死や、延命治療の停止にも正面から向かい合わなければならない。

制度設計を間違えると生きたい方の気持ちを踏みにじり、姥捨て山のように年をとったら生きるのをあきらめるような雰囲気になってしまうかもしれません。

また、保険制度や医療制度の仕組みにも切り込む必要があります。
医師会、医薬品業界、様々な業界からの反発は確実です。

それでも、私は日本人が総体として今までよりも実りの多い、恵まれた人生を送るために、
「平均寿命よりも健康寿命を優先する」
を、提言していきたいと思います。